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最高裁判所第三小法廷 昭和38年(オ)348号 判決

上告人 野田博

被上告人 国 外四名

主文

本件上告を棄却する。

上告費用は上告人の負担とする。

理由

上告代理人瓜谷篤治の上告理由第一点について。

論旨は、上告人において、本件土地の現状が前後左右みな宅地となつており、しかも都市計画区域内に含まれている事実を第一審及び原審で主張したのにかかわらず、原判決が、これを自作農創設特別措置法五条五号該当地と認めなかつたのは、失当であろというのである。しかし、本件買収処分の有効無効は、本件土地の現況がどうなつているかによつて判断すべきものではない。原判決は、上告人が本件土地の買収当時の状況について具体的事情を主張せず、現在その付近が宅地化されている事情を挙げて、買収当時より宅地的要素が多かつたと抽象的に主張するにすぎず、買収処分庁の誤認が重大かつ明白であることを裏付けるに足りる具体的事実については、なんら主張立証していないとしているのであつて、この判示は、原審において上告人の主張したところに照らして正当であり、論旨は、右判示にそわない主張というべきである。また、本件土地が都市計画区域に含まれτいることによつて、当然に自作農創設特別措置法五条五号に該当するものでないことは、同条四号との対比によつても明らかである。論旨は、採用することができない。

同上第二点について。

論旨は、原判決が、上告人において、本件買収処分を無効とする主張につき、処分に重大かつ明白な欠点があると主張しなかつたことを理由として、これを斥けたのは、審理不尽、理由不備の違法があるというのである。しかし、行政処分の無効を主張するについては、処分に重大かつ明白な瑕疵があることを具体的事実に基づいて主張すべきである(昭和三四年九月二二日第三小法廷判決、民集一三巻一一号一四二六項参照)。もとより、「重大かつ明白な瑕疵」という用語を用いるかどうかは問題ではなく、無効原因を具体的事実に基づいて主張すれば足りるのであるが、本件記録に徴しても、上告人は、本件買収処分の無効を主張するについて、具体的事実に基づいて主張立証していないのであるから、原判決が、上告人の主張を容れなかつたのは当然である。論旨は、採用することができない。

よつて、民訴法四〇一条、九五条、八九条に従い、裁判官全員の一致で、主文のとおり判決する。

(裁判官 田中二郎 石坂修一 横田正俊 拍原語六)

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